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第二日目

緩斜面からショートフライトを反復練習する。


1994年常渇水の年であった。坂下の練習場で
練習を始めた。ここは高低差20メートルぐらい、
距離100メートルぐらいのゲレンデである。

Tさんという女性のアシスタントが飛んでみせる。
斜面の中腹で見上げていると頭上4〜5メートルの
ところを飛んでゆく。青い空にピンクのグライダー
がはえる。ライン(グライダーについている細い紐)
の風を切る音が清々しい。ランディング(着地)は
鳳(おおとり)が舞い降りるようなである。

Tさんは卵型の輪郭に切れ長で涼しげな目をして
いる。ヘルメットの外に長い髪なびかせる現代的天
女といったところだ。


第三日目

斜面を上げていき左右のターンの反復練習する。次のクラスに進めるかどうか、だんだん仲間との差がついてくる。


空飛ぶ鳥人間になったつもりだが、練習はちょっと
きつかった。暑い、1994年の夏は暑かった。20
キロの機体を担いで100メートルの斜面を登るの
はきつかった。これでは焼鳥人間だ。

インストラクターのKさんが斜面の下でハンドマイ
クて誘導してくれる。アシスタントのTさんが風を
見ていてくれる。風がなければどうしようもない。
風が強くてもだめだ。人間というのがこんなに自然
に対して無力だという意味を実感する。

インストラクターのOKサインで飛び出す。落ちつい
ているつもりでもひどく緊張しているのだろう、着
地してから思い出してみると、ラインが風を切るあ
の清々しい音が聞こえていないのだ。テイクオフに
失敗したり、アホウドリのようにどたりとランディ
ングしたりしていたが、何とか10月には三ノ倉の
テイクオフから飛ぶ許可が出た。


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